新型コロナウイルスまん延による「新常態」は日本全国に広がった。東京など4都府県と政令指定都市を除く地方の企業について、2020年4~9月期の増益率ランキングを作成したところ、首位は巣ごもり消費をとらえたホームセンターのエンチョー(静岡県富士市)だった。

東京、神奈川、大阪、愛知を除く43道府県で政令指定市以外に登記上の本社を置く「地方企業」を集計対象とした。3月期決算企業(金融、決算期変更など除く)の20年4~9月期の純利益が前年同期に比べてどれだけ増えたか調べた。純利益が1億円未満か、前年同期が赤字だった企業は除外した。

都市部に比べてコロナ感染が少ない地域に立地する企業でも、業績への影響は大きかったようだ。ランキング上位にはエンチョーに限らず、各地のホームセンター、スーパーなど巣ごもり関連の企業が目立つ。

地方企業の2020年4~9月期純利益増加率
対象は登記上の本社が東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、政令指定都市以外の3月期本決算企業(金融、変則決算など除く)。2020年4~9月期の純利益1億円未満と、前年同期が赤字だった企業は除外。増加率は決算短信の記載を基に計算。
データは日経NEEDS

エンチョーは静岡県を中心にホームセンター「ジャンボエンチョー」、建築資材や工具の専門店「ハードストック」など9月末時点で55店舗を展開している。4~9月期の連結純利益は6億3900万円と前年同期の5・6倍にふくらんだ。

コロナ感染防止のマスク、消毒用アルコールのほか、電動工具などDIY関連の売り上げが伸びた。「ソロキャンプ」など新しい需要も取り込んだという。集客イベント自粛や営業時間の短縮で販管費が4%減ったことも利益を押し上げた。

2位のマキヤは総合ディスカウント店「エスポット」のほか、神戸物産とのフランチャイズ契約で「業務スーパー」を展開。コロナ感染防止や巣ごもり需要で21年3月期通期の純利益予想も前期比3・6倍の13億円に上方修正した。

このほか、ランキング上位には10位の食品スーパー、アルビス(富山県射水市)や11位のホームセンター、綿半ホールディングス(長野県飯田市)など地域密着の小売りチェーンが目立った。

綿半HDはDIYや園芸用品など利益率の高い商品分野が好調だったうえ、新たな仕入れルートの開拓やチラシ削減も増益につながった。セルフレジ増設などコロナ禍に対応した店作りを進めており、野原勇社長はオンライン決算説明会で「リアル店舗の存在価値を高めていく」と述べた。

4位の中央化学(埼玉県鴻巣市)は巣ごもり向けの持ち帰りや宅配の容器が急増した。一方でイベントや観光地での需要が振るわず全体では減収だったが、原材料価格の下落もあって利益がふくらんだ。

9位の電子ペン大手、ワコム(埼玉県加須市)は純利益が前年同期比2・8倍の62億円と過去最高になった。パソコンに手書き文字などが入力できるペンタブレット製品の売上高は56%増で、特にオンライン教育などに適した中低価格帯モデルが伸びている。

20位の日本電子材料(兵庫県尼崎市)は半導体検査に用いる「プローブカード」を手がける。テレワークが広がってデータセンター向け半導体などの需要が高まり、消耗品であるプローブカードの受注につながった。