ESG(環境・社会・企業統治)に関する企業の開示情報が注目されています。金融機関や機関投資家が投融資する際の判断材料になるなど、今や財務情報と同様、企業価値を左右する情報となっています。国内最大級を誇る日本経済新聞社の経済データバンクサービス「日経NEEDS」に新たに加わった「日経ESGデータ」なら、業界や個別企業の動向、競合他社の取り組みを迅速に把握・分析でき、今後の戦略に活用できます。

企業も投資家も行動急務に

 ESG情報開示の充実に向けた環境整備が世界的に進んでいます。欧州では、欧州連合(EU)で環境に貢献する経済活動の基準「EUタクソノミー」が2020年に発効しました。また、23年会計年度分から大企業などに対し、ESG情報開示を義務付ける企業持続可能性報告指令(CSRD)を適用する予定です。

 米国でも今年、米証券取引委員会(SEC)がESGの開示ルールの見直しを発表しました。国際会計基準(IFRS)を策定するIFRS財団は国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)を設立し、非財務情報であるESGの開示ルールの統一に動いています。

 日本も14年に機関投資家の行動指針となる日本版スチュワードシップ・コードが発表され、投資家や金融機関にはESGに取り組む企業の見極めが求められています。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は既にESG指数を運用に活用しています。

 22年4月の東京証券取引所の市場再編で最上位となる「プライム市場」の対象企業には、主要国で構成する金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に沿った開示が求められる見通しです。

 企業は自社の価値を高めるためESG情報開示の充実が、また投資家や金融機関には増加する開示情報の効率的な収集が不可欠となります。第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の開催で、脱炭素の機運はさらに高まりそうです。

業種・企業別で比較しやすく

 12月から提供を開始する日経NEEDSの新サービス「日経ESGデータ」は、ESGを重視する金融機関や機関投資家だけでなく、ESG経営を目指す事業会社にも使い勝手の良いデータベースです。

 収録する約100項目のESG関連データは、正確を期すため専門スタッフが出典元をすべてチェック。さらに、企業によって開示基準がバラバラな温暖化ガス排出量など数値データの単位や形式を統一しているのが大きな特徴です。全体集計のほか、業種別の傾向や企業比較など様々な切り口からESG対応を「見える化」できます。

 生物多様性への影響や人権問題の取り組みなどテキストデータも充実。テーマごとの検索が容易で、業界や個別企業の動向が把握しやすくなっています。収録社数は、日経平均採用銘柄で2021年9月までに20年度の統合報告書などを発表した約180社でスタートし、順次、拡大していきます。

 日経ESGデータを使い、環境分野のうち「温暖化ガス排出量」「エネルギー消費量」「水使用量」「廃棄物の排出量」の4項目について、18年度と20年度を比べてみました。

 最も改善したのは温暖化ガス排出量で、20年度は18年度比で13.0%減りました。テキストデータによると、グループ全体で7%減の29万トンだった日立建機は、設備が排出する二酸化炭素(CO2)の価格を独自設定し投資判断の基準にする「インターナルカーボンプライシング(ICP)」を採用。環境負荷を抑える投資を進めていました。同様の取り組みは住友金属鉱山で行われているほか、DICも導入を決めたこともわかりました。

 一方、改善が進んでいなかったのが水の使用量で、1.2%減にとどまっていました。化学や非鉄金属メーカーを中心に工業用水の使用量が目立ち、水資源の効率的な利用が今後の課題として浮かび上がりました。